すふにん小説

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弥勒物語♯10

僕はベッドに寝転がり冷静に今までの事を振り返った。

元の時代に戻れない可能性がある……。

果たして帰れないとして僕はこの時代で上手くやっていけるのだろうか。

正直、これはデートどころではないかもしれない。

観音様……夢には現れてくれないのでしょうか。

僕のこの人生最大の危機を救ってはくれないのかな。

今までなんとなくコンタクトが取れていた観音様とも意思疎通ができないとなると、僕はこの時代では失敗できないということになる。

なぜかって?それは当たり前だ。もし、このタイムリープした世界でも不登校になってでもしてみろ。また同じ苦しい人生を繰り返すことになるのだ。それは何としてでも絶対に避けなければいけない。

あの地獄の人生の繰り返しだけは……。

しかも……。

唯一、自分を今まで助けてくれていた仏教とも縁が切れるということなるのだから。

それは……無仏縁になるということか?それだけは……それだけは……嫌だ。

そう考えてみると仏教とはどれだけありがたい教えだったのだろうか。

この、仏縁と縁が薄い娑婆世界で、つまり仏と縁が切れたら人生それまでだ。

それなら、引きこもっていた方がマシだった。引きこもっていたのだとしても、それでも仏教というものに縁があったのだから。

……いつも困った時や悩んだ時に助けて貰っていたなあ。慰めてもらったことは何千回になるのだろう。

……観音様、お釈迦様、阿弥陀様。

僕はどうしたらよいのでしょう。

誰か……誰か助けて。

ああ……そういえば。

元の時代でも、皆は元気でやっているだろうか。

小さい頃に仏教の世界と交わりを持っていた頃は、夢の中で、仲間達と遊んでいたなあ。

あの頃は楽しかったな……。

新しいおもちゃで遊んでいた時に皆、羨ましがっていたっけ。

彼女に振られた時も、全力で慰めて貰っていたなあ。

悪いことをした時は、仲間から怒られたこともあったっけ。

皆、それぞれ自分の道を探しているのかな。

あの夢の世界は繋がりがあって、皆、子供の頃は夢の世界で一緒にいて、心の中でもこの地上の世界とも仲間達とは繋がっているって観音様に聞いたことがある。

大人になっても、あの娑婆世界で上手くやっているのだろうか。

あの夢の世界とこの地上の世界は密接に繋がりがある。

そして……。

【全てのあらゆるものは繋がりを持って生きている】

仏教の基本的な考えだったな。

観音様に会いたい。仲間たちと会話したい。夢でまた極楽の世界と繋がりたい。

僕がバカでした……仏教から離れてでも、過去に戻ってやり直したい気持ちの方が強かっただなんて。それも彼女を作るためだけに?なんておかしな選択をしたのだろうか。

……ああ。

……申し訳ありませんでした。

僕はベッドにうずくまり、またシーツを涙で濡らすのだった。

またやり直したい、こんな人生でも、またやり直せるのかなあ?

こんな僕なんかでも。

ああああああ。

元の時代に戻ったら、真っ当に生きよう……これは阿弥陀仏が悟りを開く前の姿だった、宝蔵菩薩への僕の誓いだ。

僕は負けない。せめて自分という存在だけには負けてたまるか。

これからは悔い改めて精進しよう。だから、早く元の世界に戻るんだ!

……。

僕は一時間にも及ぶお祈りの中、密かに決心した。

デートはドタキャンしよう……いや、嫌われてしまうのも今後の学校生活が困難になるから、誰か他の友達と行ってもらうようにしてもらおう……彼女にとってもそれが一番良いに決まっている。こんな僕と一緒に行くよりかは数千倍もね。

電話は後でするとして、まずは元の時代に戻る為の手がかりを探さなくてはいけないね。

僕は、仏教の専門書を漁りに古本屋に行くことにした。

当時は、まだ通販で本を売る時代ではなかった。

自力で本屋に行って探さないと。

なんとかして……戻らないと。

元の時代に。

そして僕はなんとか元の世界に戻る為の手がかりを掴もうと近所の古本屋へと直行するのだった。