すふにん小説

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弥勒物語♯12

遠ざかる意識の中で夢想に浸る。

戦国時代にタイムリープするとはどういったことだろうか。

いや、それより。

カピラヴァストゥというのはお釈迦様の生まれた国じゃないか。

僕はそこに行くことになるのだろうか?

生きながら輪廻転生をするという意味だろうか。

戦国時代なんかに行きたくないよう。

あああああ。

……なんて残酷な運命だろう。

い、いや、あの本の内容が正しいとは限らないのだから気にしすぎる必要はない……か?

仏縁を取り戻したいからといって昔のインドなんかに行ったら暑さで干からびてしまうじゃないか。苦行を一緒にやることになったりなんかして……。

ひいいいい。

僕は深く考えないことにした。

これも、色即是空、空即是色なんだ、色はすなわち空、形あるものや夢は全て幻……。

そして次の朝を迎えた。

タイムリープ、五日目。

僕は、昨日の夜あったことを全て忘れることにした。

本を焼き捨ててしまおうかと思ったけれど、万が一ということも考えてそれはやめておいた。

今日は、日曜日で学校は休みである。僕は近くのお寺に助けを求めに荷造りをする。

もしかしたら仏像の前に座れば何か変化があるかもしれない、僕はその望みに一縷の希望を置いたのだ。

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。僕はお経を唱えながらカントリーロードを歩く。

しばらく歩くと昔、よく行っていたお寺が見えて来た。宗泉寺。

ここは自由に仏像の前で座禅が組めてお祈りをすることができ、一般の人でも参拝が可能なお寺である、このお寺で僕は仏像から御声を聞こうとやってきたのだ。

お願いしします、お釈迦様。何か御声をお聞かせくださいませ。

僕は参拝したあと、仏像の前で土下座をして三十分間、そのお釈迦様と睨みあった。

やはりだめか……。

諦めて帰ろうとしたその時、お釈迦様の仏像がほのかに輝き、僕の耳に不思議な声が聞こえた。

(ミロクか……)

 !!

「はい! そうです、弥勒でございます。お釈迦様でいらっしゃいますか!?」

(ふむ、何があったというのだい? おまえにしては妙に信心深いではないか)

 これは本物の仏様の御声だ!やった!心の中でガッツポーズをする。

僕は今まで起こったこと全てを包み隠さず話すことにした。

(なるほど、するとおまえは十年後の未来からやってきたというのだね?)

「はい、そうなのです。どうにか元の時代に戻る方法はありませんか?」

(しかし、わたしはそんなものは信じる気にはなれない。きっと狸か何かが化かしたのだろう。現におまえは子供のままの姿ではないか、漫画ばかり読んでないでしっかりと勉強しなさい)

 ……いきなり否定から入られた。

「しかし、お釈迦様。私は未来に起こることを存じております」

「例えばお釈迦様が枝豆が好物だってこと、これは本当のことですよね? いつぞや夢の中でお話して貰いました」

(!?なぜそのことを知っている)

 続けて話そうとしたが……いや、ここは般若心経を唱えた方が早いと暗記した全文を全て暗唱する。

!!

お釈迦様の像がピクリと動いた気がした。

しばらくの静寂の後……。

(ミロクか……わしは初めから信じておったぞ 彡^^)

 嘘つけ!と心からツッコみたくなったが今はそれどころではない、僕は何かお智慧をお貸しくださいとお願いする。

(ふむ、それなら……)

(その時間旅行ができるという腕時計をここに置いて帰りなさい)

 僕はお釈迦様としばらく会話した後、時計を仏像の前に置いて、自宅に戻るのであった。