すふにん小説

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弥勒物語♯13

タイムリープ、六日目。

僕は学校を休んで近くの公園に来ていた。

きっと、学校から連絡が親に行ったろうな……これじゃあ完全に不良息子だ。

公園のベンチに座り、思索に耽る。

これから、どうしたらいいのだろうか。

元の時代にも戻れず、過去に戻って新しい人生を始めようとしたプランも失敗に終わってしまいそうだ。

もういっそ、川に飛び込んでしまおうか。

一体、僕は何のために生まれたんだろう……。

「おい!」

「おい、ミロク! おまえ、こんな所で何してるんだぁ?」

 ああ、遂に幻聴まで聞こえて来た。

「おいったら……! 俺を無視すんのかぁ?」

 僕は顔をちらっと横に向けた、あれ?この子はどこかで見た事があるような?

「ミロク、おれの顔を忘れたのかぁ? 千佳ちかだぞ、久しぶりだな!」

 あれ、チカじゃないか……宗泉寺に住んでいる住職の娘さんだ。

「久しぶり、チカ……こんな所で何してるんだ?」

「久しぶり……じゃ、ないだろ、ミロクこそこんな所で何してるんだ? 学校は? もう終わったのか?」

 偶然もいいところだ。この子はチカ。当時、僕の唯一の知り合いの幼馴染だ……もっとも、お寺にいる時にもすれ違うだけで会話した事はほとんど無いのだが……一体、なんの気まぐれなのだろう?

この子は僕と同じくこの後の未来で不登校になった子だ。僕が不登校になった事で、ショックを受け、不登校になったのだ。その後、僕は一人暮らしを始めて、すぐに離れ離れになったのだが……。

まさか、こんな所で出会うなんて思わなかった。

「学校は……今日はサボったよ。チカこそ、こんな所で何をしてるの?」

 僕のその発言を聞いて驚いたチカは、目を丸くして心配そうに僕の方をまじまじと見てきた。

「おまえなぁ、いくらクラスメイトと上手くいってないからってサボりはよくねぇぞ、ミロク? 何かあったなら、俺に相談してみろ? な? 心が少しは晴れるかも知れないぞ?」

「信じて貰える訳ないさ」

 すると、チカは少し頬を膨らませて

「おまえ、俺に内緒ごととはいい度胸だな! 許嫁の俺に秘密なんておまえらしくないぞ!」

「誰が許嫁だ!」

 その謎の発言に上手くツッコんだものの不覚にも僕はそのチカの言葉に胸が少しドキドキしてしまった。

しかし、天涯孤独な今のこの身に、この人生最大の秘密を一人で抱えきれそうにもなく、この幼馴染に全てを話す事を決心した。信じて貰えなくてもいい、確かに……話すだけで少しは気が楽になるかもしれない……。

「じゃ、じゃあ言うけどさ……」

 僕は今まで起きた出来事を掻い摘んで、教えた。

「……」

「おまえなぁ……」

 やはりダメだ。信じて貰える訳がなかった、失敗した……話すんじゃなかった。

僕が思ったその時。

「なんで、なんで、なんで、そんな大事な事を、俺に早く、相談しないんだよ!」

 !?

千佳の顔を見てみる。目にはうっすらと涙を浮かべているじゃないか。

彼女がこんな涙を流したところを今まで自分は見た事があっただろうか……え?何?一体どうしたというの?

「チカ、し、信じてくれるの?」

「信じるに決まってんでしょ! おまえ……そんな大変な秘密を一人で抱え込んで……大変だったな……弥勒。これからは俺が、ずっとおまえの傍にいるからな……」

 ……。

チカ……。

おまえって奴は、なんて慈悲深い子なんだ……ダメだ、もらい泣きしそうだ。

僕と彼女はその公園で一緒に号泣してしまっていた。